ダイエットに限らず、スポーツでも勉強でもビジネスでも新しいことにチャレンジしたときに、この世界には行動を続けることができる人とできない人の2種類が存在します。
私もダイエットに挑戦しては途中で挫折してしまい、結局うまくいかなかったという苦い経験を何度も繰り返してきました。
途中で挫折しても、またしばらくすると理想的なカラダを手に入れたいという欲望にかられ、やる気を起こしてダイエットを始めるのですが、どうしても長続きせずに終わってしまいました。
よくよく原因を調べてみると、ダイエットが上手くいかない原因は自分の持っている「意志の力」の使い方を間違えていたことに気づいたのです。
この事実に気づき、再度ダイエットに挑戦しました。
あれから8年が経過していますが、今でもリバウンドすることなく体脂肪率を10%台で維持できるようになりました。
これは自分の意志の力の存在に気づき、ダイエットに寄与する行動を上手く続けられるようになった、つまり習慣化を上手く手に入れることに成功したおかげです。
この記事では、ダイエットが上手くいかない人に共通する原因である「間違えた意志の力の使い方」について解説し、どのように自分の意志の力を使っていけばよいのか、意志の力を使う3つのコツについて説明していきます。
ダイエットが上手くいかない原因の意志の力とは?
「意志の力」と聞くとあなたは何を想像しますか?
おそらくほとんどの人は意志が強い・弱いといった強弱の強さを思い浮かべるのではないでしょうか。
意志の力は強い・弱いでは量れない
たとえば、煙草を吸っていた人が禁煙を始めたとします。
禁煙を始めてまもなくすると、我慢しきれずに煙草をまた吸ってしまったとします。
もしあなたがそのような行動を見れば「あの人は意志の弱い人だな」と思ってしまうのではないでしょうか。
このように、意志の力は「強い」「弱い」といった力の強弱で判断されてしまう傾向があると思います。
ちなみに「意志」を辞書で引いてみると、次のように定義されています。
困難や反対が有っても、最後までやり抜こう(絶対にすまい)という、積極的な心の持ち方。
たしかに、意志の強さは心の持ちようで決まると理解できます。
しかし、強い・弱いといった強度で意志の力を考えてしまうと、必ずといってよいほど途中で心がポキッと折れてしまうことがあります。
なぜなら、意志の力は強い・弱いといった強弱で表せるものではなく、使い切ったらなくなるといった数量で量るものだったからです(詳しくは後ほど解説します)。
私も自分では意志の力は強いほうだと思ってずっと生きてきました。
勉強でも運動でも遊びでも、自分の決めたことは必ず最後までやりとげようと、今まですべて区切りの良いところまでやり遂げてきました。
ところが12年以上もダイエットをしてはリバウンドを繰り返してしまう結果を目の当たりにしたとき、意志の力を強弱で量るには限界があるのではないかと気づきました。
どんなに意志の力が強いと思っていても、ダイエットにおいては積極的に最後までやり抜こうとする気持ちが保てないことがあると気づいたのです。
意志の力は強弱ではなく、数量である
そこで、理系人間である私は、意志の力を「強い」「弱い」といった強度で量るのではなく、お金と同じように「使い切ったらなくなる」といった数量に置き換えて考えるようにしました。
しばらくすると、同じような考えを提唱している記事を書籍やインターネットで見つける機会が増えてきました。
それらの記事を参考にしながら、自分の考えを整理していくとすべてに合点がいくようになりました。
1日のうち、私たちが持てる意志の力には限りがあり、その力を使い切ると最後までやり抜こうという気持ちを保てなくなることに気づいたのです。
つまり、意志の力を使い切ってしまうと「やるのか」「やらないか」の選択を行えなくなるのです。
いわば、ペットボトルに入っている水と同じです。
のどが渇いたのでペットボトルの水を飲めばのどの渇きは潤いますが、ペットボトルの水の量は減ってしまいます。
そのままペットボトルの水を飲み続けていくと、最後には水は必ずなくなり、ペットボトルの中身は空になります。
私たちは1日の終わりに睡眠をとり、疲れたカラダを休息させて次の日に備えます。
このときに回復されるのは体力や気力だけでなく、意志の力も回復されていると考えることができます。
人生は選択の連続
朝起きてから夜寝るまで、私たちの生活はすべて選択の連続によって成り立っています。
たとえば、朝起きてから着替えるとき、どの服を着ようかと服を選ぶことも選択です。
着替える前に朝食を食べるか、食べ終えてから着替えるか決めることも選択です。
のどが渇いたときに水を飲むのか、お茶を飲むのか、炭酸飲料水やコーヒーにするのか、これを決めることも選択です。
このように、仕事や重要な局面だけではなく、普段意識していない日常生活もすべて選択の連続によって成り立っています。
意志の力は行動の選択を決めるエネルギー
毎日の生活で行動を選択するときに使われるエネルギーは、私たちが普段食べ物から摂取しているエネルギー(熱量:カロリー)ではありません。
どんなにお腹がすいていても、次の行動をどうするのか決めることができるのは、食べ物から摂取したエネルギーではなく、別のエネルギーを使っているからです。
ポイント
次の行動をどうするか決めるときに使われるエネルギーが意志の力なのです。
意識している・していないにかかわらず、選択をする際には意志の力は使われていきます。
朝起きてから夜寝るまで選択を繰り返していくうちに、意志の力は少しずつ減っていき、最終的には枯渇してしまいます。
つまり、使い切ってしまえば意志の力は空っぽになってしまいます。
そのため、意志の力は少なくなればなるほど選択の精度も落ちていきます。
たとえば、1日の仕事の終わりやものすごく重要な局面を無事に乗り越えたあとなど、頭がうまくはたらかない経験をされたことがある方も多いのではないでしょうか。
たしかに体力も減っていると思いますが、それだけではなく意志の力も減っているために選択の精度が落ちてしまっているのです。
上手く続けられない原因:ホメオスタシスと意志の力の関係
新しいことに挑戦するためには、今までに行ったことのない動作を取り入れて、はじめて行うことも増えるはずです。
つまり、新しい選択の連続が続いてしまいます。
それは今のあなたにとっては苦痛であるかもしれませんし、嫌なことかもしれません。
無意識に避けてしまうことかもしれません。
たとえこれから始めることがあなたにとって良いことであったとしても、あなたの脳は今のあなたを変えようとはしません。
なぜなら、私たちのカラダには現状を維持するように仕組まれた本能が備わっているからです。
これが「ホメオスタシス」(恒常性維持)と呼ばれている機能です。
たとえば、私たちの体温が常に一定なのはホメオスタシスによるものです。
暑ければ汗をかき、汗が蒸発する気化熱を使って体温を下げようとします。
逆に寒ければブルブルっとカラダを震わせて、その振動で熱を発生させてカラダを温めようとし、常に体温を一定に保とうとします。
これらホメオスタシスによる行動はほとんどが無意識によって行われています。
そのため、何か新しいことに挑戦すると、はじめのうちは意気込んで行動を続けることができますが、ホメオスタシスの影響によってだんだんと行動することを選択できなくなってしまいます。
よく長続きしないことを三日坊主と言いますが、これはホメオスタシスが正常にはたらいている証拠。
ホメオスタシスは私たちヒトの本能で行われているので無意識に行われます。
そのため、私たちは何も知らずにいるとホメオスタシスの影響に気づけない場合がほとんどです。
ホメオスタシスの打ち勝つには意志の力が必要
あなたが何か新しいことを始めようとすると、あなたの脳はすべての能力を使っていかにも正当に思える言い訳を作り出し、あなたに今の環境・状況を変えないように訴えてきます。
このとき、ほぼすべての言い訳はあなたの意識しない領域から作り出されます。
つまり無意識にホメオスタシスの抵抗が始まるのです。
注意ポイント
ホメオスタシスの抵抗によって、あなたは自分ににとって良いことを始めようとしているにもかかわらず、その新しい行動を始めない選択を無意識のうちに行ってしまっているのです。
これを意識するためには、あなたの無意識に打ち勝つための強い選択のエネルギー、つまり大量の意志の力が必要になります。
なぜなら、ホメオスタシスが自動的に選んでいるものをあえて選ばない選択をしなければならないためです。
ホメオスタシスに逆らう行動を選択するために意志の力を大量に消費してしまうのです。
たとえば、明日から早起きしようと決めたとします。
目覚まし時計のアラームを目標の時間にセットして、意気込んで前日は早めに眠りについたとしても、次の日の朝、アラームが鳴ったときにあなたはパッと起きることができるでしょうか。
カラダは十分な睡眠をとって休養していたので、カラダを動かすためのエネルギーはしっかりと回復されているはずです。
ところが、カラダを動かすエネルギーは回復されているにもかかわらず、なかなか起きることできません。
- あと5分だけ寝かせて
- カラダが慣れるまで横になっていて、それから起きよう
- 今朝は少しカラダがだるい気がするから、もう少し寝てから起きよう
- 寒いから、部屋が温まるまで布団の中で待っていよう
このような考えが目覚まし時計のアラームが鳴ったときに容易に思いつくと思います。
あなたの脳からすれば「早起きせずにいつも通りに起きる」ことが現状を維持するために優先することであって、早く起きることは現状を維持することに反することなのです。
つまり、ホメオスタシスからすれば、朝早く起きないことがいつも通りなので早く起きない選択を最優先であなたに提案してきます。
このホメオスタシスの抵抗に逆らって朝パッと早く起きる行動を選択するためには、あなたの意志の力が必要なのです。
ポイント
何か新しいことに挑戦する(いつも通りでない行動を選択する)ときには、ホメオスタシスの抵抗に逆らうために意志の力を多く使う必要があるのです。
このように、普段の生活に新しいことを導入するには、あなたが無意識で行っているホメオスタシスに打ち勝つ必要があります。
そのときに使うエネルギーが意志の力なのです。
ダイエットが上手くいかない原因の対策:意志の力の賢い使い方
ここまで意志の力とホメオスタシスの関係について確認してきました。
では、実際に意志の力をどのように使っていけばよいのでしょうか?
ここでは12年以上もダイエットに失敗し続けてきた私が、意思の力をうまく活用してリバウンド地獄から脱出できたおすすめの意思の力の賢い使い方3選をご紹介します。
ホメオスタシスの抵抗を認知するためのおまじない
新しいことに挑戦しても長続きしない人のほとんどはホメオスタシスの抵抗に気づけていません。
そのため、三日坊主を経験したり、うまくいかない自分が許せなくて自己嫌悪に陥ってしまったりで、そのストレスが原因で余計に太ってしまうこともあります。
私もホメオスタシスの存在を知る前は、学生時代に体育会系で鍛えた気合と根性で何度か挑戦しましたが、結局ダイエットに関してはうまくいきませんでした。
たしかに根性論も好きですが、新しいことに挑戦するときは長続きしませんし、どうしてもポキッと心が折れてしまうこともあります。
そこで、根性論に頼らないおすすめの方法は、次のおまじないを唱えることです。
何か新しいことに挑戦して、自分にとって良いことのはずなのに、気分がのってこなかったり、おっくうになったりしたときは、次のことを思い出してください。
「あっ、ホメオスタシスの抵抗がやってきたぞ!」
こう唱えると、行動をしない選択を選ぼうとしている自分を客観的に捉えることができます。
私たち人間は感情の生き物ですから、主観的に捉えてしまうとホメオスタシスの抵抗によって感じた感情に簡単に流されてしまいます。
しかし、客観的に自分を捉えることができると、冷静にどちらの選択をした方が自分にとって有意義なのか一瞬考える時間が持てます。
この状態になれば、意思の力を使う準備ができたことになります。
ホメオスタシスの抵抗を見破る方法については、下記の関連記事で詳しく解説しています。
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早起きは三文の徳:朝は意志の力が満タン!
「早起きは三文の徳」ということわざをご存知ですか?
朝早く起きると良いことがあるという意味です。
実は、意志の力を最大限に活用するには朝の時間がもってこい。
なぜなら、意志の力は使い切るとなくなってしまいますが、しっかりと睡眠を取ると意志の力も満タンに回復するからです。
つまり、先ほどのペットボトルの例で言えば、朝起きたあとはペットボトルの中の水(意志の力)が満タンな状態になりますので、ホメオスタシスの抵抗に打ち勝つだけの力強い行動の選択に意志の力を十二分に使うことができます。
たとえば、30分程度の運動を週に2~3回行おうと決めたとします。
このとき、朝の出勤前にウォーキングやジョギングをする場合と、仕事から帰ってきてから行う場合では、圧倒的に前者の方が無理なく行動を選択することができます。
その理由は、朝起きたあとは体力も意志の力もどちらもしっかりと回復しているからです。
帰宅後では、仕事での疲れもありますが、1日を通して行ってきた行動の選択で意志の力をほとんど使い切ってしまっているからです。
逆に、朝の行動習慣が身につくと、今度はホメオスタシスがあなたの味方になります。
朝にダイエットに寄与する行動をすることがあたりまえになると、ホメオスタシスは朝の行動を行うようにあなたに訴えかけてくれます。
なぜなら、ホメオスタシスはあなたにとっての「あたりまえ」の状況をずっと継続させようとする本能だから。
こうなってしまえばしめたもの、あなたのダイエットはホメオスタシスの追い風に乗ってどんどん加速します。
ポイント
ダイエットなどで新しいことを始めるには、朝の時間帯を有効に活用することで意志の力を効率的に使うことができます。
意思の力を使い切ったら無駄な悪あがきはしない
意志の力は「強い・弱い」ではなく「多い・少ない」で判断します。
そのため、意志の力が少ない状態で新しいことを始めようとすると、どんなに気合をいれて意気込んでもやる気がでてこなかったり、おっくうに感じてしまうことがあります。
それは1日の行動の選択を通して意思の力を使い切ってしまっているからです。
私がリバウンド地獄にはまっていたころは、ダイエットのための習慣作りとして、仕事が終わったあとにジムに通ったり帰宅後にジョギングしたりと、さまざまなダイエットに有効と思われる行動にチャレンジしてきました。
はじめのうちはモチベーションも高くて良いのですが、2日、3日・・・と日が経つにつれて、だんだんとめんどくさいと感じたり、何かだるさを感じたりと、気づけばダイエットに寄与する行動がピタリとやんでいました。
なぜなら、ダイエットするぞと意気込んで行動を開始したのに、結局行動できていない自分に嫌気がさして、ストレスを感じその状態から逃げ出してしまったからです。
これは意志の力が空っぽに近い状態にもかかわらず、無理やり新しいことに挑戦しようとしたために、ホメオスタシスの抵抗に打ち勝つことができなかったのだと思います。
意志の力について理解が深まったあとは、私も朝の時間を有効に活用して、ダイエットのための習慣づくりを行いました。
その結果、12年以上もはまっていたリバウンド地獄から脱出することに成功しました。
ポイント
意志の力を使いきってしまったら、悪あがきせずにしっかりと休養と睡眠を取って、まずは意志の力の回復に努めましょう。
そして、意志の力が満タンになったら、また新しい行動を選択してみましょう。
まとめ:意志の力は使い切ったら回復させるのが吉
ここまでダイエットが上手くいかない原因とその対策について確認してきました。
「意志の力」の使い方1つでダイエットに成功するかしないか、つまり、行動を続けることができるかどうかが決まります。
意志の力はお財布に入っているお金と同じ。
なくなれば新しいものは買えませんから、またお金を財布に入れておく必要があるのと同じで、意志の力も使ったら補給しなければ次の選択肢を正しく判断して決断することはできません。
私たちの本能には、現状を維持させようとするホメオスタシスがはたらいています。
残念ながら、ホメオスタシスは、たとえあなたにとって良いことであろうと、新しい行動の選択を拒絶するような仕組みを持っています。
あなたがホメオスタシスの抵抗に打ち勝って、新しい(正しい)行動を選択できるかどうかは意志の力がどのくらい残っているかで決まります。
ぜひ次の3つを有効に活用していただき、あなたのダイエットに役立ててください。
意志の力を賢く使うための3つのポイント
- 何か新しいことに挑戦して、自分にとって良いことのはずなのに気分がのってこなかったり、おっくうになったりしたら、ホメオスタシスの抵抗を見破るためのおまじない「あっ、ホメオスタシスの抵抗がやってきたぞ!」を唱える
- 意志の力が満タンな朝の時間を有効に活用する
- 意志の力を使い切ったら、悪あがきせずに寝て意志の力を回復させる
自分のダイエットについて、敵についても味方についても情勢をしっかりと把握していれば、何度戦っても負けることはありません。
まさに『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』です。
意志の力を有効に活用してあなたのダイエットを加速させてください。