あなたはも感じたことはありませんか?
もしかすると、とてもシンプルですが、大切なことを1つ忘れているだけかもしれません。
それは「意識する」こと。
「・・・は?」
と思われた方がいらっしゃるかと思いますが、実は脳の仕組みを考えると、「意識すること」であなたの減量のスピードを上げてくれる可能性があります。
この事実はハーバード大学の研究結果として報告されています。
この記事では、意識することがダイエット成功のコツだったことをハーバード大学の研究結果を参照しながら確認していきます。
意識とは
意識とはどのようなことなのでしょうか?
ブリタニカ国際大百科事典によると、以下のように定義されています。
広義にはわれわれの経験または心理的現象の総体をさし、狭義には、これらの経験中、特に気づかれる内容を意味する。また、それら多様な経験内容を統一する作用を意味することもありきわめて多義的である。
しかし意識はいずれにしても主観的で、個人的であって内省によってのみ把握できる直接経験である。意識は単に観念の集りではなく、一つの流れであり (W.ジェームズ)、その状態には明瞭な焦点と明瞭でない辺縁部とが区別される。また意識が覚醒状態であるとすれば、覚醒していない状態を無意識として総括することもある。
意識は精神異常によってあるいはせばまり (意識狭窄)、あるいは曇り (意識暗化)、あるいは濁り (意識混濁)、あるいはばらばらに解体したり (精神錯乱)、また夢のような状態になったり (夢幻状態) する。
<出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典>
ポイントを赤くしてみましたが、かなり抽象的な表現でわかりづらいです。
念のため、別の辞書でも調べてみましょう。
1 心が知覚を有しているときの状態。「意識を取り戻す」
2 物事や状態に気づくこと。はっきり知ること。また、気にかけること。
=出典 デジタル大辞泉=
こちらはかなり理解しやすいと思います。
何が言いたいのかと申しますと、意識とは、心の状態や物事の気づき、それをはっきりと知ることなのです。
「無意識」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
意識がない状態で何か物事を行っていたり、考え事をしていたりする際に「無意識で~」、「無意識に~」などと表現します。
たとえば、歯を磨くとき、いちいちどの歯からどのくらいの力で磨こうか、と考えながら歯磨きをする人はいないと思います。
また、歩くときもまずは右足をどの程度の力で前に出し、次に左足をどの程度の力で蹴りだせばよいのかなどと考えなくともあなたは歩けるはずです。
これらはすべて無意識に行われているからです。
ダイエットにおける意識の大切さ
「あなたは運動していますか?」と尋ねられたとき、どのように返答するでしょうか。
たしかに、趣味でスポーツを行っている方や、日ごろから意識してトレーニングしている方以外は「していない」と返答してしまうのではないでしょうか。
しかし、実際に1日の生活「朝起きてから夜寝るまで」を追いかけてみると、通勤時にもカラダを動かしていますし、営業職の方であれば、お客様を訪問するときにもカラダを動かしています。
サービス業の方であれば、業務のすべてでカラダを動かして何かしらの作業をしているはずです。
それにもかかわらず「運動していない」と答えてしまうのはなぜでしょうか?
それは、「運動」という言葉を聞いたときに、あなたは無意識に「スポーツなどでカラダを活発に動かすことだ」と考えてしまった結果、日常生活でカラダを動かしていることを運動として認識できなかったからです。
実は、これがお伝えしたかった「意識」の大切さなのです。
日常生活でカラダを動かしていることも「運動である」と意識できると、あなたのダイエットは加速します。
そのことを証明したハーバード大学の実証結果を見てみましょう。
ハーバード大学の実証結果
2007年にハーバード大学が発表した“Mind-Set Matters Exercise and the Placebo Effect”*1)で興味深い研究結果が報告されています。
無作為に選ばれた7つの別々のホテルではたらく84名の女性ハウスキーパーを2つのグループ(InformedグループとControlグループ)に分けて実験が行われました。
実験を行うにあたり、どちらのグループにも以下の情報が伝えられました。
Controlグループに伝えたこと
- アメリカ疾病管理予防センターの推奨する1日の運動量を満たすためには、激しい運動や辛い運動は必要ない。
- カラダを動かすこと(筋肉が動くこと)でカロリーが消費されること。
ただし、Informedグループだけには、追加で以下の情報が伝えられました。
Informedグループに追加して伝えたこと
- 通常業務(ホテルのハウスキーピング)はとても良い運動であり、アメリカ疾病管理予防センターの推奨する1日の運動量を満たしていること。
- 15分間の掃除機がけで50kcalが消費され、15分のバスルールの清掃は60kcalが消費される、といった具体的な普段行っている業務のカロリー消費量。
これらの情報を得た後4週間にわたって通常業務を行ってもらい、実験開始前と実験後で体重、体脂肪、血圧、ウエストとヒップの比率、BMI(Body Mass Index)などが測定されました。
実験期間中は、今まで通りの食生活(食事の種類や量、酒やたばこなどの摂取量も今までと同じにする)を実施してもらいました。
その結果は以下の通りです。
<出典:Mind-Set Matters Exercise and the Placebo Effect>
実験の結果、Informedグループは明らかに今まで以上に運動量が増え、その結果、体重、体脂肪、血圧、ウエスト/ヒップ比、および日BMIのすべての項目で減少傾向が確認されました。
つまり、「仕事による運動効果を意識して痩せた」と結論できます。
普段の仕事も立派な運動であると意識したことで、ハウスキーパーたちは歩く量を増やしたり、今までエレベータを使っていたものを階段に切り替えたりと、意識的にカラダを動かすことが増え、知らないうちにダイエット効果が出ていたことになります。
意識(マインドセット)がダイエットを成功させる
RAS : 毛様体賦活系
<画像出典:The Reticular Activation System: The Part You Of Brain That Helps You Get What You Want>
たしかに、ハーバード大学の実験結果は、私たちが「意識」を高めることで、ダイエット効果が確認できたことを証明するものでした。
しかし、なぜ意識を高めただけで実際にダイエット効果が得られたのでしょうか?
それは、私たちの脳にある情報の取捨選択をするフィルターが書き換わったことで、今まで気づけなかった情報を積極的に取り入れることができ、運動量も増え、食事も無意識のうちに食べ過ぎなくなっていたことが考えられます。
この脳のフィルターは毛様体賦活系(RAS : Reticular Activating System)と呼ばれています。
マインドセットは基本的な考え方のフレーム(枠組み)
私たちは、何かの行動を起こす前に、必ず頭の中でどのように行動しようかと基本的なフレーム(枠組み)を考えてから実際の行動に移します。
簡単に言ってしまえば、「ものの見方」です。
よく色眼鏡をつけていると例えられることもありますが、物事を判断したり、行動したりする際に基準とする考え方を人それぞれ必ず持っています。
この考え方のフレーム(枠組み)をマインドセットと言います。
ハーバード大学の実験では、ハウスキーパーの方に「あなたの仕事は、実は痩せるような運動をしていますよ」と伝えたことで、ハウスキーパーの方々は「私は運動している」とマインドセットが行われました。
その結果、4週間でカラダの変化を感じることができたのです。
つまり、マインドセットを行うことでダイエットを加速させることができるのです。
意識がダイエットを成功させるコツ:まとめ
私たちがダイエットに取り組むとき、食事のことや運動のこと、やる気やモチベーション、具体的なノウハウなど、様々なことを考えてから行動を開始します。
この考え方の基本となるフレームがマインドセットです。
つまり、極論的に言ってしまえば、ダイエットは食事やカラダで行われているのではなく、脳(マインドセット)で行われているのです。
そのため、考え方のフレームがダイエットに適したものに変わるだけで、無意識のうちにダイエットが加速することが可能です。
ハーバード大学の実験に参加したホテルのハウスキーパーたちが証明してくれました。
あなたの色眼鏡をダイエットに適したものに変える最初の一歩は、「意識する」ことです。
ぜひ、あなたの日常生活をもう一度俯瞰して、どの程度カラダを動かしているのか意識してみましょう。
参考文献
*1): “Mind-Set Matters Exercise and the Placebo Effect”, Crum, Alia J., and Ellen J. Langer. 2007. Psychological Science 18, no. 2: 165-171.